2012年3月7日水曜日

放射線測定器をもって外に出よう | 水元公園

3月3日土曜日、放射線測定に行ってきました。場所は、先日下記のように報道されていた葛飾区にある『水元公園』。実際どうなのか自分で確かめてみたくなったからです。
葛飾区の公園でチェルノブイリ級最高レベル
ホットスポットの衝撃
■水元公園までの道のり

東武伊勢崎線で北千住まで出て、そこからJR常磐線各停で金町へ。金町駅周辺は毎時0.15マイクロシーベルト程度、たぶんこのガイガーカウンターならば原発事故の影響下にないところでもこのくらい出すでしょう。

僕は金町で下車してバス(京成バス「JR小岩駅」行き)を利用して柴又帝釈天まで出ましが、京成金町線に乗り換えた方が手間・運賃的に良いです。電車もかわいいし、おすすめです。

柴又にきたのは初めてだったので、心躍らされる出店ひしめく通りに、すっかり観光気分に。でも、このあたりの線量はやや高くて毎時0.20マイクロシーベルトくらい。

帝釈天を過ぎて少し歩くと『寅さん記念館』に隣接する『柴又レンタサイクルセンター』があります。今回できる限り広い範囲で測定したいと考へ、レンタサイクルを使うことにしました。

借りた自転車で江戸川沿いのサイクリングロードを走ると、スタートしてすぐのところに「金町浄水場」の二つの大きなタンクが見えてきます。原発事故当時、水の汚染が懸念されたことが思い起こされます。

サイクリングロード上は柴又帝周辺と線量にあまり変わりませんが、途中橋の下を通過するために土手を下って川沿いの道に降りることになり、そこで測ってみると毎時0.30マイクロシーベルトとやや高い線量が測定されました。その時、たぶんこのコントラストが、この辺一帯の雛形なのだろうと思ったのを覚えています。

サイクリングロードを降りて町中を少し走ると「都立水元公園釣仙郷入口」という看板のある水元公園の入り口に到着します。柴又レンタサイクルセンターからここまで、計測などせず普通に走っていれば20分程度でしょうか。天気が良くて風が無かったこともあるでしょうが、かなり近く感じました。

■水元公園

園内に入って少し走ると、所々で毎時0.3マイクロシーベルトを超えるところがでてきます。その詳細は下記の通りです。


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水元公園はとにかく広い公園でした。レンタサイクルを選択したことはまったくの正解で、歩いていたら、このように公園の端から端まで巡ることは不可能だったでしょう。

園内は毎時0.210.32マイクロシーベルトと、場所によってかなりの濃淡のある分布になっていているように思います。川沿いで思ったように、この分布はこの辺一帯のコントラストなのだと、後にこの結果を見渡してそう実感しました。

この記事中には園内で一番空間線量が高かった場所として、毎時0.74マイクロシーベルトが計測された「野鳥観察舎の入り口」があげられています。僕もその辺りで測ってみたのですが、それほど高い線量は計測されませんでした。

野鳥観察舎」自体は水はけが良さそうな板張りの建物で、そこに立ち入ってしまえば、土壌むき出しの場所よりも線量は間違いなく低いはずです。たぶん高い線量を記録したのは、その建物を介した雨水などが溜まるような場所にある落ち葉だとも思うのですが…今思えば、もう少しちゃんと測ってくればよかったと思っています。


■計測について

測定した機器はロシア製ガイガーカウンター「SOEKS-01M」。ベータ線も計測し、低線量下では実際よりある程度高い数値を弾き出す――ので、そうであってほしいと願う反御用な人たちにも人気の低価格放射線器機です。

地図は、前回の流山と同じようにスマートフォンに「My Tracks」というGPSロガーアプリケーションを入れて地点情報と線量を記録、生成されたKMLデータを再構成(かなりコツがいる)してGoogleマイマップに流し込んだもの。

計測距離はだいたい地上1メートルくらい。本来であるならば同じ場所で何度か計測してその平均を求めるのが最善でしょうが、時間的な制約の中できるだけ広範囲を測定したかったので、かなり簡略化しています。なので、あまり信頼できる数値でないことは記して強調しておきます。そもそもこのような低価格ガイガーカウンターによる計測には限界があります。

スマートフォンとBluetooth通信してGPS地点情報と線量を記録していくことができるという、HORIBAの新型シンチレーション・サーベイメーター「Radi PA-1100」があれば、もっと詳細なデータが集められそうな気がするのでほしいのですが、かなりお値段が…。

■おわりに、放射線報道の問題点

ここから先は蛇足として読んでいただければと思います。計測器機も安物な所詮は素人調査に過ぎないので偉そうなことは言えないのですが、現場に行ってみると、どうも「チェルノブイリ最大級レベル」というような報道とのギャップを感じずにはいられませんでした。

野鳥観察舎の入り口」に関して、そこを見てきてある程度確かな事として言えることは、まずそこは公園のかなり奥まった場所にあること。そこに一日ずっと人が居続けることはないだろうということ。子供が転げ回って遊ぶことも無いだろうということです。また、ここで野菜などを育ててそれを食べることもないでしょう。この場所がたとえ比較的高い線量があったとしても、それほど問題があるとは、あまり思えませんでした。

もちろん、この公園に比較的高い線量の場所があることは嘘ではないと思います。そして、国が除染の必要が無いと言われても、近隣住民や訪れる人にとって気持ちのよいものではないでしょうから、何らかの対応が必要かもしれません。

でも、このような報道で問題があるように思うのは、かなり狭い範囲で高い汚染が発見されたことがセンセーショナルに報道されることによって、そのすべての地域が同じように汚染されているように伝わってしまうことです。そしてその範囲は放射状にどんどん広がっていって…
水元公園の一部から高い放射線量が計測されたということは、水元公園全体が汚染されていることであり、水元公園が汚染されているということは、葛飾区全体が汚染されていることであり、葛飾区が汚染されているということは東京都全体の汚染が深刻なのだ!日本全体も!そして世界も…
――という、なんだか書いていて馬鹿馬鹿しくなるようなことが、まったくそのままリアルな状況として今の日本の一部にはあります。

これは発信する側のみならず、受け取る側の問題も多く含んでいるようにも感じますが、最終的に日本全体が手のつけられないほど汚染されてしまっていて結局何をしても無駄なのだというような考えに陥らせてしまっては、問題解決の障害になるだけのような気がします。

このような悪循環を断ち切るのは、多くの人が放射線測定器をもって外に出ることかもしれません。広範囲な線量マップは国から発表されていますが、原発事故から1年が経とうとしている現在は、もっと狭い範囲の詳細な線量マップが必要になってくると思います。そして、それができるのは、私たちのようなアマチュアの放射線測定家なのかもしれません。